生まれた場所がけっこう長閑な場所でしたから、田んぼはよく目にしておりました。

何を隠そう小学校に入って、体育の授業に学校近くにありました田んぼへ行き先生のお話を聞かされた覚えもございます。

それから学校帰りに自分の家が近づいてくると、田んぼのあちこちから、子供たちの遊んでいる声なんかも聞こえてきました。
本当に楽しそうなのです。

田んぼについてはまったくの素人ですから、
どんなにこれが大切なものかなんて考えません。あれはたんに子供の遊び場なんだ、という認識しかなかったのです。

先生のありがたいお話はどこへやら、やっぱり子供は遊びが第一でして。そう言えば、父親のお墓があるお寺も、
当時は田んぼに囲まれていました。父はかなり早い時期に亡くなりましたから、小学校から帰るといつもお寺の近くへ行って遊んでおりました。

するとそのお寺の住職が出てきて、いつも何かおもしろいお話を聞かせてくれるのです。

それがまた楽しくて、ほとんど毎日のように出かけてました。小さい頃の思い出はそういうものでしょうか。

今のようにゲームですとか、気の利いた遊び道具もございませんでしたから、
そういうことが一番の楽しみになっていたのでしょう。

ですが、それもつかの間のことでした。小学校に入って初めての夏休みに、

母親が東京の人と再婚することになり、この長閑な町を後にするのでした。

なかなか自分では気に入っていた場所なのに、とそのときは思いましたが、東京の暮らしもなかなかでした。